相続登記の義務化とは?登記手続きの流れや費用も合わせて解説

相続登記の義務化が決まりましたが、義務化されるとどのような影響があるのか詳しく知らないという方も多いでしょう。

法改正後に相続登記の手続きを怠ると、罰則の可能性があるので注意しなければなりません。

この記事では、相続登記の義務化の内容や登記を行う場合の流れなどを分かりやすく解説しています。

義務化の内容を知りたい方は参考にしてみてください。

目次

相続登記とは

相続登記とは、土地や自宅などの建物の不動産を所有している人が亡くなったときに、新たに不動産を所有する相続人に名義変更をする手続きのことです。

不動産の所有者が亡くなったあとに相続登記の手続きをしなければ、登記上で次の所有者が分からなくなってしまうでしょう。

また、法務省の登記簿によって誰が所有する土地や建物なのかを管理しています。

そのため、相続登記の手続きは不動産を管轄している法務局で行わなければなりません。

相続登記をする不動産が今住んでいる地域と異なる場合は、その不動産を管轄している地域の法務局で手続きを行います。

法務省が所有者の管理をしていますが、所有者が亡くなっても自動で手続きは行われません。

相続登記を行っておらず正確な所有者でなければ、第三者に対して土地や建物の所有権を主張できないので注意が必要です。

相続登記を義務化する理由

相続登記の義務化が発表されましたが、なぜ義務化するのでしょうか。

義務化の理由を以下で分かりやすく解説していきます。

所有者不明の土地問題を解決するため

相続登記の義務化は、登記の記録では所有者が分からない土地や、所有者が分かっていても連絡が取れない土地問題を解決するためです。

この問題を所有者不明土地問題と言います。

本来であれば、土地などを所有している人は不動産登記簿で確認が可能です。

しかし、今まで相続登記は義務ではなかったので相続登記の手続きが行われず、登記簿に最新の情報が記載されていない不動産が増えてきました。

国が行った調査では、登記簿では所有者が分からない土地が約22%もあったのです。

所有者不明の土地面積は九州よりも広く、深刻な問題と言えるでしょう。

所有者不明の土地が増えていくと、管理されずに放置されてしまい、固定資産税の未納や災害が起こった場合には復旧作業の妨げにもなります。

また、民間取引や公共事業などでの土地活用が困難となり、土地開発ができないといった問題が起こっている地域もあるのが現状です。

相続登記の義務化は所有者不明の土地問題を解決するだけでなく、土地開発など地域の発展にも役立つと期待されています。

権利関係を明確にするため

相続登記を行わなければ、権利関係が複雑化するリスクが高まるでしょう。

例えば、自分の祖父が亡くなったときに相続登記をせず放置していたとします。

数年後、自分の父が亡くなった場合、父の分の遺産相続も開始されるのです。

このように、何代にも渡って相続登記が行われていなければ、権利関係がどんどん複雑になっていくでしょう。

現に、数十年間放置して手続きが複雑化した事例もあります。

長い間相続登記が行われずにいると、いざ相続登記をしようと思っても、相続人同士で面識がなかったり連絡先が分からなかったりする可能性もあるでしょう。

権利関係を明確化することにより、国だけでなく相続人も不動産の管理をしやすくなります。

不動産を売却できるようにするため

相続登記の義務化により、不動産の所有者が明確になるので不動産を売却しやすくなります。

所有者不明の不動産は、ローンを組んだり売却したりすることができないからです。

遺言に不動産の相続について書かれてあっても、売却などの手続きはできません。

そのため、義務化されることで正確な不動産の所有者が分かり、相続人は不動産の売却が可能となります。

なお、相続人が複数いて遺産分割協議が成立していない場合は、不動産の名義変更は行えません。

遺産分割協議が成立して相続登記が終わるまでは、法定相続人で不動産を共有します。

また、借金を滞納している相続人がいて相続登記を行っていない場合、不動産が差し押さえられる可能性があるでしょう。

しかし、相続登記の義務化により差し押さえのリスクを減らせます。

相続登記の義務化の開始時期

相続登記の義務化が開始される時期は、2024年4月1日からです。

義務化が施行されると、相続の開始および所有権があると知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります。

そのため、もし相続する不動産があったとしても、自分が相続人だと知らないのであれば相続登記の義務は発生しません。

複数の相続人がいる場合は、相続の発生を相続する最後の人が知った日から3年が相続登記期間です。

相続登記の義務化でどうなるのか

気になる相続登記の義務化は具体的にはどのような内容なのでしょうか。

以下で詳しく説明していきます。

相続登記を怠ったら過料

正当な理由なく3年以内に相続登記をしなかったときは、10万円以下の過料を求められる可能性があります。

遺言などの遺贈により、不動産の所有権を得た人も対象です。

しかし、やむを得ない理由がある場合には、期間内の手続きを免除する制度もあります。

期間内に手続きできない場合は相続人申告登記

遺産分割協議に時間がかかるなどで3年以内に相続登記できない場合は、相続人申告登記という制度が利用可能です。

相続人申告制度は、「該当の登記名義人に相続が発生したこと」「相続人が判明していること」を申し出ることで過料対象から除外されます。

相続人が決まっておらず相続登記がまだできないことを証明するための制度で、不動産の名義人を証明する制度ではありません。

そのため、遺産分割協議が終了したら3年以内に相続登記の手続きが必要です。

法改正前の相続も適用

相続登記は義務化前に発生した不動産も対象です。

義務化前の不動産は、法改正の施行日から3年以内に相続登記しなければなりません。

法改正前に自宅など把握している分は相続したが、法改正後に新たに相続する不動産が発覚した場合には、その不動産の相続を初めて知った日から3年以内が対象です。

そのため、不動産相続を知った日または、施行日のいずれか遅い日が適用されます。

相続登記の手続きの流れ

義務化されると相続登記をしなければいけないことが分かりましたが、相続登記の手続きはどのような流れになるのでしょうか。

以下では遺言が無かった場合の流れを解説していますので、実際の手続きに入る前に確認しておくと安心です。

相続人と相続する不動産を調べる

誰が相続人で、どの不動産を相続する権利があるのかを明確にします。

まずは、相続の対象となる人を、民法第900条に定められているので確認をしましょう。

tips!!〜法定相続分

相続の均分(遺産の分け方)については民法第900条に定められています。

同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

  1. 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
  2. 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。
  3. 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
  4. 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
引用:WIKIBOOKS(民法第900条)

■相続順位や均分についてはこちらの記事でも詳しく解説しております。

さらに、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本などの書類が必要です。

戸籍謄本を遡って調べて、相続人が確定します。

次に、不動産については、登記識別情報や固定資産税の納税通知書などから亡くなった方が所有していた不動産を調べあげなければなりません。

市町村の役所で名寄帳を取得して調べることも可能です。

所有していた不動産を調べたら、法務局で登記事項証明書を取得し、登記記録でも不動産を所有しているかを確認します。

相続人を決める

相続人が決まり、相続する不動産が分かったら、次は実際に不動産を相続する人を決めましょう。

遺言が無い場合は、民法第900条に相続分が規定されています。

しかし、相続人全員の話し合いで合意すれば、法定相続分と違う割合でも分割可能です。

相続人全員での話し合いを遺産分割協議と言い、遺産分割協議で不動産の相続人を決めた場合、遺産分割協議の内容を記した遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書は、相続人全員が署名・実印の押印をして完成です。

所有権移転登記を行う

相続登記に関する書類が揃ったら、所有権移転登記の申請を行います。

自分で申請も可能ですが、司法書士に依頼することが多いでしょう。

司法書士へ依頼した場合、戸籍謄本や登記事項証明書の取得までしてもらえます。

また、遺産分割協議に関しても、相続人が署名・押印すれば完了の状態の書類を作成してもらうことも可能です。

相続登記にかかる費用

相続登記にかかる費用は、全て自分で行う場合は実費のみで済みます。

司法書士へ依頼する場合は、実費にプラスして手数料を支払わなくてはなりません。

以下でそれぞれの費用について詳しく解説しています。

自分で行った場合

実費には、必要書類の取得にかかる費用と登録免許税があります。

まず、必要書類は、住民票・戸籍謄本・登記事項証明書・印鑑登録証明書などがあり、それぞれに取得費用が必要です。

次に、登録免許税は、登記を申請するときに必ず納付しなければなりません。

登録免許税は、不動産の固定資産評価額の0.4%と決まっています。

例えば、500万円が不動産の固定資産評価額だった場合、登録免許税は2万円です。

自分で行ったときの総額は2〜3万円ですが、手続きには時間と労力を費やすでしょう。

司法書士へ依頼した場合

司法書士へ依頼した場合は、登録免許税などの費用に手数料がプラスされます。

相続登記の平均は3〜10万円ほどですが、相続登記に関してすべて依頼するのか、申請のみなど一部分を依頼するかによっても費用は異なるでしょう。

自分ですべて行った場合と比べると費用は高めです。

しかし、司法書士へ依頼する方が手間も時間もかからず、スムーズに相続登記を終わらせられるでしょう。

まとめ

相続登記の義務化が施行されると、正当な理由なく登記手続きを期間内に行わなかった場合に過料を求められる可能性があります。

そのため、相続の発生を知ったら早めに手続きを開始してください。

相続登記の手続きをするときは、必要な書類集めから申請までスムーズに行ってくれる司法書士への依頼を検討しましょう。

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