相続放棄を検討している人で、弁護士と司法書士のどちらに依頼するか悩んでいる人もいるでしょう。
相続人にとってプラスになる遺産ならいいのですが、中には親の借金などマイナスの遺産もあります。
このマイナスの遺産を巡っては、相続人同士が争う原因になりかねません。
この記事では、相続放棄を司法書士に相談するメリットと手放すタイミングについて解説します。
相続放棄をしたほうがいいケースとは
両親や親戚など身近な人が亡くなった際、必要な手続きが相続放棄です。
家やマンションなどのプラスの遺産だけではなく、親の借金も対象になります。
こちらでは、相続放棄をしたほうがいいケースについて解説します。
相続放棄のメリット
相続放棄のメリットは、借金問題や相続トラブルから解放されることです。
主な財産が老朽化した自宅だけの場合、修繕費で高額な費用がかかります。
自分にとってマイナスになる土地や家を引き継ぎたくない人は、相続放棄が可能です。
また相続人同士の仲が悪く、遺産の分け方でトラブルが懸念される際も相続放棄ができます。
相続人同士の争いから抜けられるため、精神的ストレスから解放されるでしょう。
相続放棄のデメリット
相続放棄をすると、その後遺産は受け取れません。
理由は、この手続きは一度受理されると撤回ができないからです。
例えば、相続放棄した後、被相続人に高額な財産が分かったとします。
本来相続人はこの財産を受け取れますが、相続放棄すればそれを受け取れないので損をしてしまう可能性があるでしょう。
プラスの財産の中に家があり、相続人が住んでいても放棄するとその家に住めません。
ただし、お墓や仏壇など祭祀の道具は相続放棄しても受け継げます。
相続放棄する前に、被相続人の財産を慎重に調査しましょう。
相続放棄を司法書士に依頼するメリット・デメリット
相続放棄を検討している場合、司法書士に相談が可能です。
自分で手続きを行うより、プロに依頼した方が手続きもスムーズにいくでしょう。
しかし、相談するうえでメリットばかりではありません。
こちらでは、相続放棄を司法書士に依頼するメリット・デメリットについて解説します。
司法書士に依頼するメリット
司法書士に依頼するメリットは2つあります。
1つ目は、戸籍収集や裁判所提出書類を任せられるところです。
相続人が放棄する際は、被相続人が最後に住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所に行き、申述する必要があります。
相続放棄申述書は、相続放棄を家庭裁判所に認めてもらう大事な書類であり、正確に記載しなければいけません。
司法書士に依頼すれば戸籍収集や裁判所に提出する必要書類を揃えて提出してくれるため、時間や労力の節約になるでしょう。
2つ目は、回答書のアドバイスを得られることです。
相続放棄の申立を行うと、家庭裁判所から相続放棄に関する照会書が届きます。
照会書の内容は被相続人の死亡を知った日や被相続人の財産について質問事項が記載されており、これらの答えを回答書として提出しなければいけません。
回答によっては相続放棄が認められないため、司法書士に相談すると正しい回答書の書き方をアドバイスしてくれます。
司法書士に依頼するデメリット
司法書士に依頼するデメリットは2つあります。
1つ目は、相続放棄を依頼すると依頼料が発生することです。
事案にもよりますが、依頼料の相場はおよそ4万〜7万円かかります。
弁護士にも同じ依頼ができ、相場は10万〜20万円と司法書士の相場よりも高額です。
2つの依頼料を比較すると、弁護士よりも司法書士の方が安いでしょう。
2つ目は、相続放棄に詳しい司法書士を探す手間です。
全ての司法書士が相続放棄に詳しいわけではありません。
多くの司法書士が得意としているのは登記です。
登記業務しか経験していない司法書士に相続放棄の依頼をしても、依頼を受けてくれるか分かりません。
各司法書士のホームページでは、どのような業務が依頼できるか紹介されています。
相続放棄に詳しい司法書士を見つけて依頼をしましょう。
相続放棄ができる期間
相続放棄ができる期間は決まっており、この期限以内に申請しなければいけません。
ただし、期限が過ぎても手続きをすれば、再延長が可能です。
こちらでは、相続放棄ができる期間と再延長手続きについて解説します。
期間は3か月以内
相続放棄の期限は、自己のために相続が開始したことを知った日から3か月以内です。
相続人は、被相続人の死亡を把握しているとは限りません。
また、相続人の範囲は身近な人ばかりではなく、疎遠になっている親族など広範囲で探す必要があります。
相続人によっては、3か月以内に探せない可能性もあるでしょう。
被相続人が生前に財産を全て把握して、遺言書に残していれば手続きがスムーズです。
しかし、遺言書もない場合は財産の数や相続する人数など、一から探す必要があります。
期間が過ぎても再延長が可能
相続放棄を検討している中で3か月の期限が過ぎた場合、原則として相続ができません。
しかし、相当の理由があれば、家庭裁判所に申立てを行い、相続放棄が可能です。
家庭裁判所が相当の理由を判断するには、以下の事情が考慮されます。
- 被相続人と相続人が疎遠であり、期限内の手続きができなかったなどやむを得ない事情があった場合
- 被相続人に借金があると思っていなかった場合
これらのケースは家庭裁判所が相当の理由と判断し再延長と相続放棄が認められますが、期限を知らなかったという理由は認められないため注意をしましょう。
相続放棄したほうがいいタイミングとは?
相続を放棄していいのか受けたほうがいいのか迷う人もいるでしょう。
タイミングを逃すと放棄できる期限を過ぎてしまい、相続放棄ができない可能性が高いです。
こちらでは、相続放棄したほうがいいタイミングについて解説します。
被相続人に借金問題がある
被相続人が亡くなった時に、被相続人に借金の有無を確認しましょう。
借金があったとしても、総合的に相続人にとってプラスになれば問題ありません。
しかし、相続人にとってマイナスの遺産になる場合、相続放棄を検討しましょう。
負債があるか分からない時は、限定承認が有効なことがあります。
ただしこの限定承認を利用するには、相続人全員の同意が必要です。
相続人の誰か一人でも反対したり話し合いに応じられなければ、承認の手続きが進められません。
相続問題に巻き込まれる事を回避したい
相続人同士の仲が悪く、相続問題に巻き込まれたくない人は相続放棄を検討しましょう。
相続放棄をすると相続人としての権利がなくなり、争いに巻き込まれずに済みます。
相続人とのトラブルを回避するためにも、相続放棄ではなく財産放棄の手続きを行う人もいます。
財産放棄手続きとは、相続人との間で相続しないと意思表示をすることです。
基本的には遺産分割協議書で手続きを進めますが、家庭裁判所での手続きと違い、書面一枚で簡単に手続きが完了します。
ただし、財産放棄では被相続人に借金があっても放棄できません。
そのため相続放棄なら法的に権利がない状態となり、借金が見つかっても相続する権利がなくトラブルに巻き込まれにくいのでおすすめです。
相続放棄の手続きの方法
相続放棄は必要な書類を全て揃えたうえで、家庭裁判所へ提出します。
しかし手続きに不慣れな場合、相続に必要な書類が分からない人や手続きの方法を把握するのは難しいでしょう。
こちらでは、相続放棄をするための手続きの方法について解説します。
相続放棄に必要なもの
相続放棄には次の6つの書類が必要です。
■相続放棄に必要な6つの書類
- 相続放棄申述書
- 被相続人の死亡した旨が記載された戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人の戸籍謄本
- 収入印紙800円(申述人1人につき)
- 予納郵便切手
上記の必要書類がなければ、相続放棄手続きが行えません。
相続放棄には3か月以内の期限があり、期限を過ぎると相続放棄ができなくなります。
書類に不備があれば書き直しとなり、手続き完了までに時間が掛かるため注意をしましょう。
相続放棄申述書の提出先
相続放棄申述書や必要書類が全て揃ったら、家庭裁判所へ提出します。
書類の提出先は、被相続人が最後に住所があった所在地を管轄する家庭裁判所です。
提出方法は自分で持参するか、時間のない人は郵送で送れます。
申述書の提出後1〜2週間ほどで相続放棄申述の照会書と回答書が家庭裁判書から送られ、期日までに回答しなければいけません。
照会書を返送すると家庭裁判所で審理が行われます。
特段問題がなければ、相続放棄が認められるでしょう。
相続放棄を司法書士に依頼したほうがいいケース
相続放棄を自分で行うには専門的な知識が必要なため、人によっては限られた時間で作業を行うことに対して心理的ストレスを感じるでしょう。
司法書士に相続放棄の依頼をしたほうがいい、2つのケースを解説します。
期限内に手続きが難しい
法務局や区役所は平日しか空いていないため、期限内に手続きを済ませるのは難しいです。
仕事や家事に育児と時間に追われている人にとって、限られた期限の中で必要書類を集めて手続きをするのは時間と手間がかかります。
仕事が多忙な人はなかなか休めず、提出期限を過ぎてしまう可能性も高いでしょう。
司法書士に依頼すると、面倒な書類収集や手続きまで全て代行します。
相続放棄申述書も、あとは署名と捺印を押すだけにすればいいように作成してくれるので忙しい人は司法書士に依頼しましょう。
相続人だけでは判断できない
土地や貴金属など、相続人だけでは判断できないものがあると、相続までに時間がかかる可能性が高いです。
相続には相続放棄だけではなく、限定承認があります。
限定承認とは相続人が相続財産を算出し、財産が余ればそれを引き継ぐ方法です。
自分の自宅を相続できますが、相続人全員の承認が必要なため手間がかかります。
相続には手間がかかり、中には相続人だけでは判断できないものもあるでしょう。
判断に迷った際は、司法書士へ相談しましょう。
まとめ
相続放棄の手続きはたくさんあり、法律の勉強をしなければ自分で手続きは難しいです。
書類に不備があれば手続きまでに時間がかかり、相続できる期限を過ぎてしまいます。
司法書士に相談すれば必要な書類を全て揃え、申述書と一緒に家庭裁判所へ提出するので手続きまでに時間と手間がかかりません。
親族同士の争いになる可能性があるときや、手続きのやり方が分からないときは司法書士に相談しましょう。